1、軒端の萩か木枯か 秋風湖心に竿させば
遥かにのぞむ星のかげ 足音もせぬ時の舞
蘭春の香は既に去り 杜の都に秋暮れぬ
2、旅路伝ふて廿年の 来し方遠くみかへれば
払はぬ庭の草わけて こごしき岩のつづら折
夕陽燦ときらめきて 血汐小途に映ゆるかな
*「夕陽」は一般に「せきよう」と歌う。
3、孤燈隻影相吊し かりがね鳴くや小夜嵐
清水のあとは涸れはてゝ 高楼甍苔むせど
今萠え出づる春の芽に 吹くや羅綾のにしき風
4、盈虚の隙や白馬とび 一春秋の風立てば
薫風かをる樹のかげに 断琴の友たづさへて
花の宴のむしろ敷き 汲むやこがねの水の色
5、あゝ行きなやむ人の子や 自治の鐘の音ひびかせつ
たかなる胸の潮もて あこがる理想栄光に
只ひとすぢにひたすらに 我等が道を行かん哉
6、混濁の波押しわけて 明善のみち辿りつゝ
澆季浮薄の塵の世に 受難の姿うるはしく
北斗久遠を仰ぎつゝ 永久の誉れを守るなれ